失せモノ探し

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 友達とショッピング楽しんでいた時だった。ふと目に止まったファンシーショップでのクマのぬいぐるみ。いわゆるキラキラ系女子に分類される自分が買うものではないが、似ている。子供の頃母親に買ってもらった小さなクマのぬいぐるみに。あれは、今はない。  友達と別れて家に帰っている途中だった。毎日歩いている道にぽつんと占い師がいたのだ。簡単な椅子とテーブルがあり頭から目隠しをするような布を被っていて怪しすぎる。一回三千円と書かれている。そんなものに金をかけたくないと素通りしようとした時だったが、珍しいものが見えた。 普通は「あなたの運勢を占います」とかそういう謳い文句だが、こう書かれていたのだ。 ”失せモノ探し 三千円”  未来を占うのではなく探し物をする方。それは超能力者の類では無いのか。今日見てしまった、思い出してしまったクマのぬいぐるみ。本当に探せるのだろうか、そんなわけないと思うが。まるで導かれるように気が付いたら椅子に座っていた。 「いらっしゃいませ、何を探しましょうか」  声は意外にもかなり若い。こういうのは年寄り一歩手前の中年の女がやると思っていた。 「本当に何でも探せるの」 「はい。砂浜でなくしてしまった結婚指輪、落としてしまったスマートフォン、気が付いたらなくなっていた大切なもの全て」  どうせ嘘だろうなと思う。だが少し引っかかるので続けて問いかけた。 「ずっと昔になくしたものでも? よく覚えていない物でも探せるの?」 「もちろん。何を探したいのですか」  こういうのは席に座った瞬間すでに料金が発生するものだ。座ってしまったのなら仕方ない、ちょっとだけやってみるかと言葉を選びながら慎重に尋ねる。 「子供の頃……クマのぬいぐるみをどこかに忘れて、なくしたんだけど」 「それはメリーベアのような?」  ドキリとした。「ような」も何もメリーベアだ。落ち着け、クマのぬいぐるみと言ったら最初に思いつくのは有名キャラであるメリーベアじゃないか。別にこの人に不思議な力があるわけではないと自分に言い聞かせる。 「そう。どうしてなくしたのかも覚えてないから探せるんだったら探して欲しい。あと、そんなに時間がないから時間がかかるんだったら別にやらなくてもいいから」 「いえ、すぐ終わります。大体なんとなくわかりましたから」
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