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 出し抜けにヘルメットを取ったグレーテルに、僕は面食らう。けれど、首を晒した彼女はけろりとして、 「端末で測定した。周囲空気の組成は地球に近いよ」 「ああ、そう……」  あっけらかんとしたグレーテルに、僕は二の句が継げない。けれど、お陰で平常心を取り戻した。 「僕らがEVAに出て、どのくらい経った?」 「三時間。自分で確認すれば?」  僕は、画面が割れて完全に沈黙している端末を掲げた。 「壊れてる。遮蔽されてるのか、時計も働かない」 「壊れた? それに遮蔽って、船は?」 「通信できない」  急に真面目な顔になったグレーテルが、端末を操作する。でも、それも束の間。彼女は溜息と共に、早々に降参のポーズを取った。 「こっちも駄目」  何か打開策はないか。グレーテルに倣ってヘルメットを外した僕は、改めて周囲を見た。  平らな床。緩くカーブした壁。天井と奥行きは分からないけれど。 「どう見ても人工物だなあ」  僕の半ば独り言に、鉄格子に(もた)れたグレーテルが応じる。 「重力も空気もあるしね。でも、ヴァル星系は生命不在じゃなかった?」 「外側の第七から第五惑星はね。そこから内側は不明」 「未探査の惑星にいる生命が、これを作ったの?」  グレーテルの顔が、興奮で輝く──人類は、未だ異星人との遭遇を果たしていない。その最初の人になるのが彼女の夢だ。僕は苦笑して、 「さあね。そうだとしても、友好的とは思えない──」  その時だった。  奥から、扉の開閉音がした。更に、何かをひきずるような音が、ゆっくりとこちらにやってくる。  僕らは固唾を呑み、音のする暗闇を見つめ──  不意に、天井から白色光が降り注いだ。
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