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3
気が付くと、僕は檻の中で倒れていた。鉄格子の外は暗い。壁の所々に、小さな黄緑色の照明が見える。
ここは何処だ?
どうして僕は檻の中にいる?
僕は、グレーテルと岩石採集をして──
小惑星の中に引き込まれた!
「グレーテ?」
彼女がいない。
完全に目が覚めて、僕は跳ね起きた。檻の床に手をつき、上体を起こす。
「……まさか」
自分の無意識の動きに、僕は瞠目した──重力がある! それも一G近く。ここが小惑星の中なら、あり得ない環境だ。
だけど今の僕に、現状を考察する余裕はない。
ヘルメットが檻にぶつかるのも気にせず、僕は鉄格子を掴み、目を皿にしてグレーテルを探す。けれど、壁の光だけではほぼ何も見えない。
そうだ、ライト!
もたつく手で、EVAスーツのライトをつける。僅かな範囲だけど、見えるようになった。
「グレーテル!」
いた!
光がギリギリ届く壁際、同じような檻の中で、グレーテルが倒れている。安否は分からない。動かない彼女に最悪の予想が頭をよぎり、背筋が凍る。
「グレーテル、グレーテル!」
「……聞こえてる。だからその呼び方やめてよ」
何度か呼びかけたところで、グレーテルがゆっくりと起きた。
鉄格子を握り締めていた手から力が抜ける。僕は、大きく安堵のため息をついた。
「ああ、良かったグレーテル。怪我や痛みはない? スーツに損傷は?」
ヘルメットのライトをつけ、グレーテルがこちらに首を巡らせた。スピーカーと肉声の両方で、彼女の嘆息が聞こえる。
「だから……あー、もう良い。あたしは平気。ここは、小惑星の中? 何これ、重力に空気──酸素だ」
「グレーテル!?」
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