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第一話 火降る世界
見渡す限りの不毛の大地。
崩れかけた建造物が無ければ、かつてここに文明があり人々が生きていたなど誰が気づくのだろうか。
歩けど歩けど続く何もない大地は青年の人生そのものだった。
--いつか消える命なら今を精一杯生きてやる!
点と線で出来上がったヒーローは、土にまみれながらこう言っている。
それが青年にはひどく滑稽に思えるのだ。土にまみれた本を地面に投げ捨て再び歩き出す、なぜ自分がわざわざあんなものを拾い上げてしまったのか今一つ分からない。ただ何となく『拾わなければならない』という衝動に駆られたのだ。
--いつか消える命ね……そいつは羨ましいかぎりだ。
青年は本を拾ったことをひどく後悔した。
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