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「だがよ、ここだけの話なんだがな……」
店主は声を潜め、土の付いた顔を彼に近づける。
汗臭い埃と土の臭いに顔を歪めそうになったが、何とか顔には出さずに済んだ。
「今ちょうど集落のはずれにいる人売りキャラバンに『藁』がいるらしいんだ、一目見てきたらどうだ? 見せてはくれると思うぜ。絶対に買える値段じゃねえと思うがな」
「時間があったら寄ってみるよ。ついでに宿の場所を教えてくれ」
教えてもらった宿に歩き出す。
興味は無かった、どうでもよかった。
だが青年の足はキャラバンに向かう、なぜかは分からない。
ただの好奇心かもしれない、長い長い退屈な時間を少しでも潰せるかもしれない、そんな淡い希望を抱いていたのかもしれない。
だが長年の経験から面倒な事になるのが分かる。それでも彼は自らの好奇心には勝てなかった。
青年はつくづく自分が嫌になってきた。
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