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四
千鳥とパカパカは、いろんなところを歩き回って、それからいろんな鳥に尋ねてみた。
ピンクフラミンゴが片足だけで立って眠っていて、その間を銀色の漣が駆け抜けていく、浅い湿地の縁に立って。
大きな孔雀が、まるで不思議な果実のように、その極彩色の尾羽を垂れ下がらせている、うねった松の枝の傍らで。
空色や黄色、桃色のインコたちが鈴なりになって、眠りながらおしゃべりしている、大きな木の下で。
「『満月の鍵穴』について知らない?」
鳥たちから帰ってくる答えはいつも同じだった。
「さあね、知らないわ」
「知らんな。また余が眠りを妨げれば、今度はただでは置かんぞ」
「シラナイ」「シラナイ」「シラナイ」
「本当に、満月の鍵穴なんてあるのかな」
千鳥はパカパカに聞いてみる。だけど、答えたのはパカパカじゃなかった。
『そもそも、月なんてこの国では出たことがないからね』
振り返る千鳥に、パカパカはぴょんと飛び上がって、また千鳥の頭に着地した。
薄明かりの中、大きな灰色の影が立っていた。
深緑色の蓮の池の真ん中、葉っぱと葉っぱの間に立っていたのは、これまた大きな嘴と、鋭い目の水鳥だ。
ハシビロコウ。この鳥は千鳥は知っていた。テレビで何度も見たことがあったし、図鑑で生態を見たこともある、有名な鳥類だ。
「あなたは、何をしてるの?」
『見ての通り、漁をしてるのさ』
そう言いながらハシビロコウは下を向いて、それからじっとしている。
「何もしていないように見えるけど」
『君たちが大きな声で喋っているから、獲物が逃げてしまったよ。やれやれ、今夜は不漁のようだ』
それから、ハシビロコウは大きな翼を広げて、ゆっくりと羽ばたきを見せる。
「ちょっと待って! 月なんて出たことないって、一体どういう意味?」
『聞いての通りさ。だって、これだけ周りが明るいからね。月明かりなんて、必要ないだろう?』
「答えになっていない気がするけどなあ」
そんな千鳥の言葉は聞かずに、ハシビロコウは飛んでいってしまった。
『チドリは、月を見たことがあるの?』
そう聞くのはパカパカだ。
「もちろん、あるよ」
『いいなあ』
そう言ってパカパカは、ベンチのような形をした平たい石へと降りる。千鳥もそこに座ることにした。
「パカパカは、月を見たことがないの? 夜行性の鳥なのに」
『僕は大きくなっても体が白いから、木の幹のふりができないんだって。だから、鳥の世界の日が来ても、僕はこの国から出られないんだ』
パカパカは真っ白な羽毛だけど、その羽毛の感じはひよこみたいにふわふわというより、毛並みが揃ってきて一方向に流れていた。まだそんなに大きくはないけど、大人の羽毛に生え変わっているみたいだった。そして、目は白兎のように赤い。
「なに? 鳥の世界の日って」
さっき出てきた不思議な言葉について、千鳥はパカパカに聞いてみる。
「鳥の世界の日には、僕らの王様が起き上がって、世界はまた鳥のものになるんだって!」
そう言ってパカパカは胸を張る。というか、胸の羽毛を逆立てて膨らませて見せた感じだった。
「王様ってなに?」
「石の広場に王様がいるよ。見に行ってみる?」
「……うん、行ってみる」
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