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飲んで食べて、ほろ酔いで店を出た
「今日は楽しかったー!
ありがとうございます」
別れ際
改札まで見送ってくれた彼女が、そう言って軽く会釈をする
「こちらこそ、楽しかった
……じゃあ、また!」
「はい、またー!」
笑顔で手を振った美園ちゃんから視線を外し、改札に定期を通した
終電間際の西口は、相変わらず人ごみで…
後ろを振り返っても、美園ちゃんの姿は見えなかったんだ
美園ちゃんが
なんで、ただの喫茶店の客なんかと
プライベートで
二人きりで…
一緒に飲みに行こうと誘ってくれたのかは…わからない
けど
なんとなくそれから、美園ちゃんとの距離が近付いたような…気がしたんだ
そんなある日
夕方の、人が疎らな喫茶店
出迎えてくれた美園ちゃんは、なんだか、すごく浮かない、落ち込んだような顔をしていた
思わず気になって、どうしたのか聞いた
「…実はペットが…病気になっちゃって…」
と、美園ちゃんは病名を、ポツリと言った
「でも、まあ、先生が言うには、あくまでも可能性であって、詳しくは検査をして見ないとわからないって言ってたんだ
ハムスターの場合、手術は小さい身体には負担だし、麻酔をかける時にも負担がかかるし、検査費用も高額だから、抗生剤を飲んで様子を見て見ましょうか…って」
でも薬を飲んでも、病状は改善しないかもしれないらしい
ふらふらとしているハムスターを見ているのが
いたたまれなくて…
助けてあげたい
と、彼女は沈んだように言った
動物は…可愛い
けど…
飼うと…いつか先に、お別れがくるから
それが辛いから
もう飼いたくないな…
なんて思ってしまう
そんな出来事から、ひと月ほど経った時の事だった
喫茶店に行くと彼女はいなく、男のマスターみたいな人がお店を切り盛りしていた
あれ
今日は…休みなのかな…
何となく落胆して、いつものブレンドを頼んだ
仕事が終わり、自宅に帰る電車の中、美園ちゃんにメッセージを送ったが、中々既読にならなかった
夜
日付が変わる頃
寝る支度を済ませてベッドに寝転び、携帯を開いたらメッセージが来ていた
美園:すみません
メッセージ、今気づきました
返信が来た事が嬉しくて、思わずした、電話
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