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「はい…」
いつもの、美園ちゃんの声が耳に響く
が、少し…テンションが低い感じがして、遅い時間に電話をしていた事に気付いた
「あ…夜遅くに電話してごめん
今…大丈夫だった…?」
「あ…ま…はい…」
「いや、大した用事ではなかったんだけど…
今日お店行ったんだけど、美園ちゃんいなかったから…」
と、言葉を発してから
なんだか、相手を詮索しているみたいに聞こえたかな…と思う
そんなつもりは、毛頭ない……わけではないけど…
うーん…なんだ…なんて言うんだ…
その、何と言うか…気になってしまったんだ…
「そうだったんだ…
ごめんなさい…
今日…ペットの病院行くために…早く…上がったんです
でも…
さっき…
死ん…じゃって…」
一瞬、びっくりしたけど
予感が現実になった、諦観
ああ…
やっぱり…
ダメだったか…
ずるずる、と鼻をすする音が耳元から聞こえて、彼女が泣いているんだと気付いた
「どうしたら…いいか…わからなくて…
何も考えられなくて…
考えたく…なくて…」
「そっか…」
とは言っても…
遺体をずっと、家に置いておくわけにもいかないだろうし…
どうにかしないとはならない…だろうけど…
考えられない…
と言うか、考えたくない気持ちは…わかる
死んだって事を、受け止めきれない、受け入れられない…気持ち…
辛い
苦しい
何も、手に着かない
でも…
「今…家にいるの?」
「はい…」
「保冷材はある?」
「え…うん…」
「そしたら、小さな段ボールとかに、キッチンペーパーなんかを敷いて、ペットを入れて…
その周りとかに保冷剤を詰めて、ペットの身体を冷やしてあげて」
「え…
…わかった…」
「そしたら、ペットと一緒に、傍で…寝てあげて
寄り添うのも辛い
姿を見るのも苦しいなら…
身体を冷やしてあげる事までは…してあげて
そしたら後は、美園ちゃんは…ゆっくり休んで
色々考えて…寝れないかもしれないけど…
ベッドで身体を、目を閉じて休めるだけでも…身体の負担は軽くなると思うから」
「…わかり…ました」
「また明日…
連絡してもいいかな…?」
「え…
うん…」
「美園ちゃんが、迷惑とか、嫌だって思っているなら、はっきり言って
俺は…ただ
美園ちゃんが…辛そうだから…その…心配で
傍にいたいと…思っただけだから…」
「ううん
ありがとう…ございます」
「いや…
電話突然して、ごめんね
今日はゆっくり休んで
おやすみ」
「うん
おやすみ…なさい」
電話を切って、数年前にお別れした…ペットのケンを思い出した
真っ白くて、大きくて、ふわふわした中型犬…なんだけど、毛量多いから、大型犬にたまに間違えられたケン
小学校から…社会人になって働き始めても、ケンは俺と一緒で…
20年くらいは生きたかな
兄弟の中で、一番俺が…可愛がってあげていた…と思ってる
でもあの時
俺は死んだケンに対して、何も…出来なくて
母さんが、何から何まで、率先してケンの事をしてあげていたんだ
トイレシートに乗せて、保冷剤を周りに置いて…毛布を…掛けてあげて
花まで添えて…さ
翌日
ケンを火葬して…
お寺に納骨した
でも、美園ちゃんのペットはハムスターだから…
ハムスターって、亡くなったらどうするんだろう…
自宅のパソコンで、ハムスターが亡くなった後の、埋葬方法を色々調べて…
気付けば朝になっていた
カーテンを開けた外は、真っ青な晴天で…
最近続いていた曇天が、嘘みたいな空
美園ちゃんに、メッセージを送る
葉月:おはよう
寝れた?
ちょっとして美園ちゃんから、少し寝れたけど、泣き過ぎて頭が痛い、とメッセージが入った
俺は、電話していいかな、と美園ちゃんに言って電話を掛けて、二言三言、体調のやり取りを交わし、ペットの埋葬方法を聞いたら
「全然…考えられてなかったけど…
住んでるアパート、ちょっと小さなお庭があるから…そこに埋めてあげようかなって…」
と言った
「土葬か…いいと思う
けど、アパートは大家さんの物だから、勝手にそう言う事出来ない…よね」
「っ…そう…か…」
「後は…土葬だと、プランター葬ってのもあるみたいだけど…」
「プランター葬…?」
「うん
深めの鉢に、ペットと土を入れてあげる方法なんだって
マンションとか、アパートとか…賃貸の家でペットを飼っている人とかは、庭がないから、そう言う方法で埋葬したりとか…あるみたいだね
その鉢に、花とか植えて育ててる人もいるみたいだよ」
昨日パソコンで調べた情報を美園ちゃんに言った
「へえ…そうなんですか…
それいいかも…それにしてあげようかな…」
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