Rose ~幸せの案内人~

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さっき、浜松町のでかいタワーでは、友人の結婚式が行われていた 彼女は私と一緒の大学で、卒後は東京で就職して、仕事をしていた 私も卒後、地元で仕事をしていた が、3年後には 彼女は、ああして立派な結婚式を挙げ、私はその披露宴に呼ばれていたんだ お相手は10歳離れた、千円札の偉人に似ている人 でかいスクリーンには 二人の思い出が、何度もリピートして流れていた 「新婦は結婚後、主婦になるそうです」 進行の人が明朗活発に言う 幸せそうにシャッターを切られている二人 私はそんな披露宴で 儀式的に拍手したり、おめでとう、なんて言ってみたりして 無感動にスクリーンを眺めていた 主婦、か… 一生働かなくていいのかな… 夫のお金で生活出来るってことかな… 楽な人生だなぁ… ああ…こんな恨み言、思ってるからどんどんいき遅れるんだろうか けど、こうやって毒でも吐かなきゃ気持ちが壊れてしまいそう ずっと独りだから、他人の幸せが羨ましいんだ 許してよ… 私と彼女の違いって、なんだろう 私は、幸せになれないのかな… 私と、友人…何が違うの…? 同じように高校、大学と進んで、当たり前の事を、当たり前にこなしてきたつもりだ 仕事に就いてからだって、それなりに責任持ってやって、色々任されて、直向きに、努力を積み重ねて、真面目に仕事をしてきていた なのに… ろくに仕事もしない間に結婚して なんで真面目に仕事をしてきている私が結婚出来ないんだよ… 親や会社の言う事を聞いて、みんなと足並み揃えて、真面目に生きてきたのに こんな仕打ちって、ない 昔は 真面目に仕事をこなして、慎ましく生活をしていれば いつか素敵な人と出会い、結婚して、子供が産まれて… そんな普通の人が普通に営んでいく生活…そう、私の両親みたいな生活が当たり前に訪れるものなんだと思っていた けど現実 真面目に仕事して、慎ましい生活をしていただけじゃ 結婚も出来ないし、家庭を持つことも、子供なんかもっと… 全然 私の普通とする普通の生活を営むことなんか出来ないんだと、気付いた 私の望む”普通”の生活は”理想”なんだと まざまざと見せつけられたのが、さっきの出来事 行き遅れてからそんなこと気付くなんて、今更遅い 若い果実は花が散れば 後は熟れて腐ってゆくだけ 私は…結婚できるのだろうか そんな漠然とした不安が襲ってくる 理想との落差 別に、贅沢な暮らしを望んでいるわけじゃない ただ、人並みの幸せを手に入れたいだけなのにな… そんなある日の事だった 樹里:ねえ合コン行かない? 大学時代の友人で、上京して都内の看護学校に通い、今は看護師として働く子が突然そんな事を言って来た 真理:まあ、いいけど 気のないような返事をして、その実、以前行われた友人の結婚式もあって、そんな出会いの場に飢えていた私は、二つ返事で了承していた 職場は見知った顔ぶれ 入ってくる新しい人も、ほぼいない代り映えのしない固定メンバー そんな環境で異性の出会いもなく… ふってわいたきっかけに、私は浮足立った クローゼットの中にある、私の中では余所行きの、飛び切りにお洒落な服に着替えて 化粧をしたらもう出かける時間 くどくない、瑞々しい花の香りのする香水を1プッシュまとったら、少しヒールのある靴を履いて、待ち合わせ場所に向かった 新宿東南口 合コンの場所はそこからほど近いビル
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