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エレベーターが開くと、目の前はディープブルーの壁面に、お店の名前が書かれていた
正面は行き止まりで、左側を見ると木目調の壁面が広がっていた
え…入り口どこ…?
戸惑っておろおろしていると、後からエレベーターで降りて来た人が、その木目調の壁面の前に立つと、壁が開いた
うお…そこが入り口だったのか
なんだか隠し扉のような作りで面食らったが、壁のようなその入り口の前に立つと、壁が横に開いた
目の前に段々と、ホールを一周するほどの水槽が広がっていく
わあ…
何ここ…
凄い雰囲気あるお店…
店に入り後ろを振り向くと、棚のようになった壁面には、大きなサザエのような貝殻や、ビンに入った砂のようなものが飾られている
なんか全体的に南国のリゾートホテルのような雰囲気のお店だな…
「真理(まり)ー!こっち!」
入り口で突っ立っていた私を呼ぶ声が聞こえて、そちらを見ると、友人がボックス席に座って手をこまねいていた
私は呼ばれたところに向かって行く
「何ここ、すごいお洒落なお店じゃん」
つやつやとした黒い椅子に座り、私は友人と相向かいになりながら言った
先方の男二人が遅れてるみたいで、私たちは先に入って一緒に飲んでようか、と言う話になっていた
座った席のすぐ横には、入り口で見た水槽
熱帯地方のカラフルな魚が優雅に泳いでいた
「何飲む?」
友人が開いていたメニューを私に差し出した
お酒もお洒落な種類がたくさん並んでいる
「うーん、何にしようかな…
いっぱいあって決められないね…何にする?」
私はメニュー表を見ながら友人に聞いた
「私はビール」
「そっか
じゃあ私もビールにしようかな」
「おっけー、つまみ適当に頼んでもいい?
ピクルス食べれる?ナッツは?あ、ポテトも美味しそう~!」
「嫌いな物ないから適当に頼んでいいよ」
大学時代からそうだったが、私の周りの友人はさくさくと進めて行くタイプの子が多く、私はそう言う友人に基本合わせるというスタイルだった
自分の意志がないというわけではないけど、私よりも行動力や言動の力のある友人について行く、と言う生活に慣れていた
乾杯、と届いたビールで一杯しながら、つまみをつまんだ
「ところで何で突然合コンに…?」
私は気になっていた事を友人に聞いた
「いやあ…それが…
私の看護学校時代の男の友人が、遊ぼう遊ぼうって…まあ連絡がすごくて…
でも…二人で遊びたいような相手でもないから…
毎回断ってたんだけど、それでも連絡積極的にしてきて…
その、ごめん!
真理を利用したみたいな感じになっちゃったんだけど…」
あ、…なんだそう言う感じなのね…
多分…その男の人は友人の事が好きなんだろうな…
何度も断ってるのに、それでも誘う連絡をしてくるって…
相当押しが強い相手だな
まあでも利用したなんてほどでもないし、幸い私は彼氏いないから…寧ろ嬉しいというか…
「全然だよ、気にしないで!まあ大変そうだけど…今日は飲もう!」
「ありがとう真理~!ほんとごめんね!」
「いいっていいって!ところで仕事はどう?」
私は看護師として働く友人と他愛ない世間話を始めた
「いやそれが聞いてよ、こないだ患者さんがー…」
友人と、女子会のような会話で盛り上がって来た頃、ごめん、お待たせ、と言う声が横からした
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