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ゼリーが鞄の中に入りっぱなしだ。
昨日起きたことが森村の思考を止めていた。
「はぁ」
それを取り出してぼーと見つめていれば、
「それ、人気ですよね」
と声を掛けられる。
「あ、そうなんだ」
そんなことを森村が知っているはずもなく、鞄の中へとつっこんだ。
「森村さん、ありがとうございました」
「うん、別に」
今日も仕事を押し付けようとする立花に、
「ごめん。無理」
と断りを入れる。昨日、そのことを言われたばかりなのだから。
「えぇっ、一人じゃ終わりませんよぉ」
甘えた声で言われても今は睦月と顔を合わせたくない。
なんだかんだといって仕事を押し付けようとする彼女を無視し、自分の仕事を終わらせ課長にハンコを貰いに行く。
席を開けた隙、彼女の仕事が森村のデスクにあり、メモ書きが置かれていた。
「なに、これ」
なんてずる賢いのだろうか。
仕方なく仕事をはじめる。早く済ませて帰ればいい。
だが今日に限って仕事が進まない。面倒な仕事を残していったからだ。
「はぁ、与えられて仕事も満足にできないとか、どんだけ無能なんだよ」
ぶつぶつと文句を言いながらパソコンを打っていると。
「お疲れ様」
と声を掛けられる。
「あ……」
いつもなら待ちに待った存在なのに、今日はただ気まずい。
「君はまた立花さんの仕事をしているのですか」
「そうです」
昨日、聞かれたというのに立花の仕事をしているのだ。これでは自ら進んで仕事を引き受けているように見えるのではないだろうか。
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