闇夜を照らす優しい月光

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「社長」 「すみません。あまりに可愛いもので。つい」  可愛いとは誰のことか。  まわりを見渡すがふたりしかいない。いや、そうだとわかっていたが確認せずにはいられなかった。 「可愛くないですよ」  どこからどうみても可愛いから縁遠い。不愛想だと陰口を叩かれるくらいなのに。 「可愛いですよ」  耳元でささやかれて胸の鼓動が高鳴った。 「やめてください」  これ以上は心臓が持ちそうになく、森村を抱きしめる腕に触れた。 「放しませんよ。強引な手を使ってもわからせないといけませんからね」 「ひゃっ」  耳を噛まれて体が跳ねる。睦月の方へ顔を向けようとすると、顎をつかまれてそのまま上向きにされ唇が重なった。  何故、睦月は混乱させるようなことをするのだろう。  こういうことに不慣れな男には刺激が強く、気持ちを保つことができない。  一回、ひとまず休みがほしい。 「ん、まって」  だが睦月はやめることなく、口づけはさらに深まっていく。 「ふっ」  足の力が抜け倒れそうになる体を睦月がしっかりと抱きしめる。 「もっと私を意識してください」  ね、と森村の口の端を親指で拭う。  とうに容量を超えているのに更に詰め込まれて、しかもキスで足腰が立たなくなって逃げるに逃げられない。  都合よく気を失うことができたなら。この悩ましい思いをその間だけ考えずにすむのに。 「森村君、タクシーで送りますよ」 「……す」  睦月の肩にもたれタクシーへと乗り込む。  その後は前の日と同じ。  ただ、ひとつだけ。思い出したら下半身のものが反応してしまった、ということだけが違っていた。
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