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とうとう睦月で抜いてしまった。自分の中で彼の存在は潤いであり癒しであった、はずだ。
自分もそういう意味で睦月が、と思ったが恋愛経験が皆無な森村にはわからず、頭の中でぐるぐるとしていた。
「森村さん、昨日はすみません。お願いしようと思ったら席にいなくて」
今まではどうとも思わなかったのに。立花の態度がやたらと鼻につく。
彼女がデスクに仕事を置いていかなければ、こんなに悩むことはなかったかもしれない。
「これからは自分の仕事は自分でやって」
きっぱりというと作り笑いを浮かべていた顔が少しゆがんだ。
「そんなぁ、今まではお手伝いしてくれたのに。どうして酷いこと言うんですか」
まるでこちらが悪者のような言い方をする。
男たちの視線が森村に向かい、その中の一人が彼女をかばうように、
「彼女は色々と忙しいんだ。助けてやったっていいだろう」
とヒーロー気取りで言い放つ。
それなら言った本人が助ければいい、そう口にしようとした時、
「森村君、立花さん、ちょっと来てくれるかな」
課長がミーティングルームを指さし、話はここまでとなった。
部屋に入り座るように言われて腰を下ろすと二人の前に封筒を置いた。
「異動の辞令だ」
といわれて封筒の中を開いて見る。そこに書かれているのは秘書課への異動だった。
「え、なんで私が営業二課に」
営業二課の課長は女性で厳しい人だと聞く。
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