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自分のことを見ていてくれた、それが嬉しい。
「しかも! 定時までに終わっているんだよ。それなのにさ、立花ちゃんはほんのちょっとのお仕事が終わらないんでしょ。そんな無能な子は俺の下にいらない」
「なっ、そんなことはないですよ。ねぇ、森村さん」
「俺は二時間で終わらせている」
「そんな、終わるわけないじゃないですか」
いや、実際に終わっている。
立花の肩を持つ気にはなれない。縋るようにこちらを見るが無視し、土田の方へと視線を向ける。
「俺に秘書課は向いていないと思います」
これは立花のためではなく、本当にそう思うのではっきりと告げた。
だが土田は首を横にふるう。
「君はこの課にいては駄目だな。課長さん、二人は異動するけど補充はない」
「え、それは困りますよ」
「だって、よその課でお話しできる余裕があるんだもの。大丈夫でしょ」
立花だけでなく、他の人たちも同じようなことをしていたようだ。その中には課長も含まれる。
「課長、肩書、なくしたくないでしょ?」
「うっ」
課長が立花のことを守らなかったのは、肩書を守るためだった。自分さえよければ部下はどうでもいい、そんな男の下で働くなんてお断りだ。
「わかりました。できるだけはやく異動させてください」
「そう思ってお迎えに来たんだけどさ」
そういうと立花の方へ視線を向ける。かなり大きな声だったから外に丸聞こえだっただろう。
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