闇夜を照らす優しい月光

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「私は嫌です」  今度は泣き落としというわけか、涙を浮かべて土田に縋りつくが、にっこりと笑って体を引き離した。 「ウソ泣きをしても無駄だよ。俺にはわかるから。それと、明日から営業二課に行くように。さ、森村君、荷物をまとめておいで」 「はい」  先に部屋を出てデスクへと向かう。すると先ほど立花の味方をした先輩が近寄ってくる。 「お前ら、異動になったのか」 「はい。なので俺の分の仕事をお願いします」  デスクの上のファイルを先輩へと手渡した。 「ふざけんな。普通、今日の分くらいはやってから行くだろうが」 「残念。彼は今日から秘書課なので」  二人の間に土田が入り、 「あ、立花さんが泣いてるから慰めてあげなよ」  とミーティングルームを指さすと、ファイルを抱えたまま向かった。 「はー、この課ってこんな奴ばかりなの」 「俺にはよくわからないです」  彼らとは必要最低限の会話しかしてこなかったから。 「そう。さ、行こうか」  荷物もまとまったので袋に入れて、残っている人たちに頭を下げた。  秘書課の前。土田がドアを開くと中には三名の女性がいて一斉に視線が向けられる。 「はい、皆さん手を止めて注目。今日から秘書課に配属される森村君です」 「森村です」  と頭を下げると、一人ずつ紹介をしてくれる。  背が小さく可愛い顔をしているのは竹内。すらりとしたモデルのような体系と容姿を持つ松野。髪が短くカッコいい人が梅島だ。
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