闇夜を照らす優しい月光

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 顔のいい人たちに囲まれていると自分がみじめになってきて背中がまるくなっていく。 「森村君、彼女たちが綺麗だからって照れてるぅ?」  背中を強くはたかれて背筋が真っすぐ立ち上がる。 「土田さん」  恨めしく彼を見れば、 「ここはね、秘書課だけど内部調査をする課でもあるんだ」  まさかそんなことをしているとはと驚いた。 「そうなんですか」 「はい。睦月が社長に就任した時に作ったんです」  竹内がそう言葉をつなぎ、 「なので優秀な社員を補充してほしいとお願いしたところ、森村さんに白羽の矢が」  今度は松野がそうつないだ。  もともとは立花のことで内部告白があり、森村のことを知ったという。 「それなら俺がどんな人間なのかとわかってますよね。コミュニケーションの取れない根暗な男だということを」 「社長が『慣れるまで優しく見守ってあげてくださいね』と言ってましたから。なので少しずつでいいので仲良くしてくださいね」  と梅島の言葉に目じりが熱くなった。  なんて優しい人たちなのだろう。そして睦月は自分のことを気にかけてあらかじめ話しておいてくれたのだろう。 「ありがとうございます」 「いいんです。社長の思い人なのですから」  ね、と彼女たちが声をそろえ、森村は目を瞬かせた。 「え?」  だが彼女たちは笑みを浮かべるだけで、仕事の内容を説明するわとすっかりお仕事モードだった。
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