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顔が赤い理由はわかっている。誰のせいだということも。
「恨みますよ」
顔を隠すように睦月の胸のあたりに額をくっつけた。
「もしかして彼女たちに何か言われましたか?」
後頭部に掌が触れ、ゆっくりと撫ではじめる。その優しい手つきに甘えるようにすり寄る。
「何でもかんでも話してしまう社長がいけないんです」
「そのことですか。すみません、つい、口からポロリとでてしまいまして」
そこは我慢してほしかった。顔をおこし睦月を見れば、今まで見たことのない、でれでれとした表情を浮かべていた。
「なんて顔をしているんですか」
「すみません。拗ねる君が可愛くて」
そういうと額に口づけ、頭を撫でられた。
なんて甘く、そしてこそばゆいものだろうか。経験がないことだけに握りしめた拳を上下に振って気持ちを落ち着かせる。
「もしかして叫びたい気分ですか?」
「はい」
先ほど叫んでいたのを聞かれているので気づいたようだ。
そもそも好かれる要素がないのだから余計に混乱してしまう。
「社長は、俺のどこが、その、す、す……んん、好意を持ってくださったんですか?」
好きという言葉は思いのほかハードルが高く、なんとか別の言葉で尋ねる。
「貴方はどんな人なのか直接見てみたくて、差し入れという名目で会いに行きました。ですが、はじめのころは素っ気なくて、心を少しでも開いてくれたらと残業をしているのを見かけると会いに行きました」
出逢ったころはどうして社長が声をかけてくるのかと警戒していたが、こんな自分に声を掛けてくれるのが嬉しく、一緒にいると心が満たされた。
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