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一人になると胸が苦しくなり目頭が熱くなってきた。
「あー、俺って恥ずかしい奴」
体育座りをして丸くなっていると頭上にぽとりと何かが落ちた。
こんなことをするのは彼しかいない。
「なんでおかけてくるかな」
友達になれないのなら空気を読んでほしいものだ。
「あの紙飛行機は君に向けて飛ばしたんだ」
「俺に、ですか」
「話すきっかけが欲しくて」
「友達にもなりたくない相手に話しかける理由ってなんですか」
「あー、比良君、頭の上のものをとってみて」
まだ乗っかったままだったようで手を伸ばしてそれをとると真っ赤な折り紙で折られたハートだった。
「これ」
それを掴んだまま仁志を見あげれば頬が真っ赤に染まっていた。
「君にいつか渡そうと思っていたんだ」
「ハートを、ですか?」
普通に考えればラブかライクのことだろう。ただ仁志の表情はラブだといっている。
恋愛対象が女性ではなく男性であるならありうることだが、それよりも惚れる要素はどこにあったのだろう。
「比良君、目と口、開きすぎ」
頬を指で突かれて我に返る。
「そりゃ、今まで生きてきた中で一番の衝撃な出来事ですから」
「そうだよね。男に好きだって言われたんだから」
あっけらかんとしている仁志に、目を細めてじっとみる。
「実は、君のことを知っていたんだ」
「え、そうだったんですか」
接点のない先輩に知られるとか、その時の自分はいったい何をしでかしたのか。
「俺はいったい何を?」
「ゴミ置き場で、きちんと置かれていなかったのを整理していたよね」
「あぁ、あれですか」
ゴミを捨てに行ったときに別の組の男子がゴミ袋を放り投げ、山となっているところからころがり外へといってしまったのに放置していってしまった。自分でやった訳ではないが気になって整理をした。
「あと、女子が重いものを持っていたのを助けていたよね」
あれは同じクラスだというのもあって手伝っただけ。
「まだあるよ。なくしものをして困っていた子に」
「もういいです」
ただ放っておけなくて手を貸しただけ。大したことをしたつもりはないので改めて言われると恥ずかしい。
「気になりだしたら目で追うようになって、話しかけるきっかけになったらいいなと紙飛行機に俺の思いを託したんだ」
あとは運任せ。結果、うまくいったと笑う。
「愛い後輩ですめばよかったんだろうけど、知れば知るほど思いが募っちゃってね」
男もいけるんだと驚いたが、比良限定だったという。
そして、
「告白もバケツいっぱい折り紙のハートを入れて二階から落とそうかと」
なんていいだした。
「やめてくださいよ。そんなことをしたら目立つし、先生に怒られますって」
「ひかないんだ」
そう言われて、普通なら引くような行為だなと気が付いた。
仁志が嬉しそうに比良を見ている。
「耳が赤い」
指が耳に触れて、それを避けるように一歩下がった。
「何か落とせば俺が落ちるとか思うなよ」
この思いはラブではなくライク……のはずだ。
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