闇夜を照らす優しい月光

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 話をするのが得でいはなく、仲の良い相手などいない。暗くてつまらない男である森村とは大違いだ。 「お仕事に疲れちゃって休憩をしにきちゃいました」  隣の席に腰を下ろして袋の中を開いた。 「秘書課のお嬢さん達が美味しいからどうぞって二つくれました」  デスクの上に置かれたのは随分とかわいらしい食べ物だった。 「ゼリー」 「はい。お花が入っているんですよ」  透明色のゼリーの中にフルーツと花がはいっている。女子受けしそうなゼリーだ。 「見ているだけでも癒されるので」  確かにそうなのだろうが、森村にとって見た目の良さではなく、睦月から頂いたものという方が重要だった。 「あ、あの、ゼリー、ありがとうございます」  勿体なくて食べられない。それをデスクに飾ると癒しを選んだととらえたか、期限内に食べてくださいねと言い席を立つ。 「そろそろ怖ーい秘書から電話があるかもなのでお仕事に帰りますね」 「はい」  睦月が去った後、しばらくの間は余韻を楽しむ。  会社で唯一、彼だけが気に掛けてくれる。誰にも相手にされない男をだ。  ゼリーを手に持ち天にかざす。 「社長、優しいよな」  また一つ、宝物が増えた。  立花のおかげで残業ができるのだから感謝しなければいけない。
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