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僕と彼女が出会ったのは、桜が咲く季節だった。
その頃、僕は花なんて興味なかったけど、初めてできた彼女に少しでも好かれたくて、僕も花が好きなんて、そんなことを言ったっけ。
それから僕らは、たくさんの花を見に行った。
つつじに、紫陽花、ひまわり。
コスモス、ダリア、サルビア。
数えきれないくらい沢山の花を見に行って。
いつのまにか僕も、花が好きになった。いや、本当は、花に囲まれて嬉しそうに笑う彼女のことが好きだったのだ。
花を見る彼女は、本当に嬉しそうで。
頬を赤く染める姿が、とても可愛らしかった。
だから彼女が、
「春になったら、出会ったころに見た桜をもう一度見に行こう。桜はね、満開の時が一番綺麗。散った後を見ても悲しくなっちゃうから、少しずつ花びらが減っても平気なフリをして、最後は誰にも見せないようにパーッと花びらを落すんだよ。堂々と咲いてこっそり散る。だから桜を思い浮かべる時、花が咲いた満開の綺麗な桜を思い浮かべるんだ。」
って、そう言って笑っても何の疑問ももたなかった。
どんな思いで彼女がそんなことを言ったのか全く知らず、僕はただ、嬉しそうに笑う彼女がまた見られるのだろうって、そう思っていたのだ。
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