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「青兎ぉ、青兎ぉ」
力の限り、ナギ様は青兎の名を呼んだ。
驚いたのは青兎だ。
鬼神の如く返り血や、己自身の血に濡れた青兎と、真っ白な神服に身を包んだ美しい女神のナギ様。
この戦場に不相応なナギ様の姿に青兎は一時、戦を忘れた。
その隙を突かれて、青兎の背に弓矢が刺さった。
膝を着いた一瞬の間に、振り落とされた剣を躱しきれずに腕を落とした。
それでも青兎は渾身の力で、敵の首を掻き斬った。
「来るなぁっ!!!」
青兎はナギ様だけには見られたくなかったに違いない。
多くの者を殺めた鬼の形相、鬼の手に他ならない。
そして、青兎が鬼に堕ちたのは他の誰でもないナギ様の為だった。
「ナギィ、俺は地獄に落ちる人間だ。だから、お前は来るなぁっ!!!」
ナギ様の手で救われるわけにいかないと、青兎は必死だった。
それこそ意味がなくなる。
青兎はナギ様を護るためにあるのだから。
「青兎が地獄に落ちるなど無い。青兎はこのナギの神様なのだから」
ナギ様は渾身の力を振り絞って神通力を放った。
それこそ命そのものを懸けて願いを込めた。
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