ナギと青兎

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 神の力は偉大、なれども小さい。  願うだけでは立ち行かぬのが、人の世だ。  けれど青兎の心はナギ様の御手により救われたに違いない。  いや、救われたのはナギ様も同じだ。  もう一度、その手に触れることが叶ったのだから。  神代の時代を記したとする古文書によれば、以来、この国に神が生まれることは無かったと伝えている。 なんせ、人の手で神が殺されたというのならば、それも然るべきだろう。    しかしながら、人の世が神々を忘れることは、(つい)ぞなかった。 何故なのか?  互いを思いやるその御心は、人の心に刻まれ、今尚確かに残されているからだろう。  幾世紀の時を経ようとその思いは廃れなかった。  ナギ様の放った神通力は、人の心に儚くとも届いたに違いなかったのだ。               fin.
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