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離れることを愛とよぶ
それは突然の別れだった。
「キミを愛している。だから別れよう」
そう言い残して彼は住み慣れたアパートを出ていった。
呆然と再び開かれることのない玄関を凝視する。
愛…。
あいとは?
スマホに「愛」と打つ。
様々な愛という文字が無機質に流れていく。
『見返りを求めず限りなく深く慈しむこと』に、目が留まる。
間違っていない。
私の〝愛〟は間違っていない。
私が彼に捧げた全ては、何も間違っていなかったのだ。
けれど、彼は離れることを〝愛〟とよんだ。
涙が止まらなかった。
知らなかった。
こんな終わりの〝愛〟があるなんて。
私は彼から貰った〝最後の愛〟に縋り付くように抱きしめ、代わりに溢れる涙をただ、ただひたすら流すのだ。
彼を〝愛している〟から、彼が最後に選んでくれた道を歩かなくては。
そこに彼がいなくても……。
〝貴方を愛しています〟
〝さようなら〟
……行かないで
了
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