1人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
私には不満があって。
毎年のことなんだけど、髪を染めなきゃならないのに順番がいつも遅いの。
信じられる?
いつもよ?
私が予約を入れようとすると、もの凄い量の予約が先に入っていて結局後の方にされちゃう。
そもそも、御用聞きが来るシステムがいけないのよ。
今のご時世なんだからもっとやりようがあるでしょうに!
いつも遅いから今年は早いですけどって、まだ夏の暑い盛りに声がかかるのならいいのよ。
怒ったりしないわ。
寧ろ早すぎるけれど、まぁ、遅いよりはいいんじゃないの?って思うくらいには今、あんまり嬉しくないわって気分なの。
もう秋もだいぶ深まってきたし、私としては淡い赤系か渋い黄色系にしたいなーなんて色々と胸を弾ませているのに一向に順番が来ないの。
「鳴子さん!遅くなりましたー!」
やっと来たわね!
内心は喜んだけど、そんな顔をするのも癪だからツンッてしてやった。
けど、礼儀だけは忘れずにね。
「お疲れ様。今年もよろしくね」
「はい!では……皆、やるぞ!」
日光は少なくなってきたし、秋風が来てくれたから、やっと私も秋用の装いに姿をかえる。
今までの青青とした色も好きだけれど、色とりどりに染まった秋だけの色だってお気に入り。
だって……。
「あぁ、綺麗な紅葉だこと」
人間たちがこぞって褒め称えるから。
そうしたら悪い気なんてしやしないでしょ?
𝑒𝑛𝑑
最初のコメントを投稿しよう!