罪あるものの楽園

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 外から見ると教会内部は明るく見えたが、内部に入ってみるとその灯りはいかにも頼りない。静止した空気の中で、白熱灯の灯りが微かに揺れていた。 「いらっしゃいませ、神の子よ」  その挨拶を彼は奇妙に思う。まるで、商店か居酒屋を訪れでもしたようだ。  中にいたのは一人のシスターだ。ほっそりした体に黒を纏い、頭も黒い頭巾で覆っていて、簡素な燭台を手にしている。シスターということは、この教会はカトリックなんだろうかと、彼は少し考える。 「僕は神の子じゃない。懺悔を聞いてくれますか。僕の罪の告白を」 「神父様はお留守です。私ではゆるしの秘跡を授けることはできません」 「別に構いません。赦されなくてもいいんだ、僕は」  シスターは数秒黙り、彼の様子を確かめている様子だった。 「こちらへ」  シスターは彼の手を引き、告解室へと導くのだった。
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