第三章:正気は狂気

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第三章:正気は狂気

 20,806...本日死亡っ!251...爆散予定ッッ! 無意味にも思える長方形のスペースに数字を打ち込む事に意味を持たせることにした。 これは今日死ぬ予定の人数を表す数字なのだ!ギャハハ!死ね死ね!  桐山クン?なんか楽しそうだね。それとは別に、今日残れる? え?  ははは…桐くんさ、何がどう面白いのか知らないけど、もっとツマンナそーにしてないと、そうなるよそら。 そうですよね…えぇ… 紙コップに注がれた微妙な味のコーヒーを啜れるこの時間がなければ、俺はもっと狂った妄想をヤっていたに違いない。 …いやむしろ、カフェインの過剰摂取の影響で今も尚おかしいのではないのか?  もっと言えば、忙しいフリしなきゃね。 え? 演技でも何でもいいんだよ、ほら、この前木下さんがやってたみたいに、”電話してるフリ”してみるとか。 は?あれエア電話だったんですか!? あらら、桐くんって企画ものの番組とかガチで信じちゃうタイプ?  松居先輩は手を抜く方法を熟知しており、だからこそ、同僚の行動の裏を知ることに長けていた。 だがしかし、この人がサボっているのを俺は一度も見たことが無い。  あの… ん? どうしてそういう”裏ワザ”みたいなの知ってるのに、同じことやって抜けちゃおうとか思わないんですか? …あぁ、確かにね。言われてみれば、なんでだろうね…この会社、好きでもなんでもないのに。 正気でい続けるということは、ある意味この世で最も狂気な行いなのかもしれない。  … 残りの仕事を片付けて、それで残業、という流れだったはずだった。 いつの間にか帰路についていた。 いや、今俺が乗車している電車は、”いつもの”電車ではない。  次は、赤鋳茶峠_赤鋳茶峠_ 車掌が存在しないであろう駅名をアナウンスしている。 スマホで検索しても、それらしいモノはヒットしない。 …というか、こういう状況なら普通この手の機具は”圏外”になって使い物にならなくなるのでは? こういう考えがまだ巡るということは、俺はまだ冷静らしい。  俺はあえて降りないことにしようとしたが、赤鋳茶峠を過ぎた後にアナウンスされる駅名がまたもや赤鋳茶峠。 何度も何度も赤鋳茶峠であり、車窓から見た風景も延々ループしている。 それでも降りないでいると、目の前の床から黒い影が焼き上がった餅の如くぷくっーと出現した。  おい!いい加減にしろ!お前はここで降りるんだよ! あっ!お前は! もういい!わかってる!面倒だからある程度の記憶はこの後も残してやる。さっさと降りろ! 俺は黒い影に抱きかかえられたと思ったら、ドアがぷしゅっと開いた拍子に外へ投げ飛ばされた。
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