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別れ。
「他に好きな男の人ができたから、もう離婚しましょう」
先月、妻の美波と俺の結婚式があった。
これから家族を幸せにしよう。そう考えていた時、美波にそう告げれ、俺は酷く困惑した。
「じゃ、お幸せに」
そう言って、美波は家から出て行った。
それから何日経っても、美波が家に帰ってくることはなかった。
俺は仕事を休み、一日中考えた。
どうして美波が出て行ってしまったのか。
美波は『他に好きな男の人ができた』と言っていた。でも、俺は嘘だとすぐに分かった。
(なら、俺がなにかしてしまったか?)
俺はそう思い、過去の言動を思い出してみたが、思い当たる節は思いつかなかった。
俺たちは同棲もしていて、美波が出て行った前日も、二人で映画を観ていたくらいなのに。
そんなことを考えていると、一本の電話がかかってきた。
その電話の相手は、『美波の妹』と名乗る人物だった。
『あの、突然で申し訳ないんですけど…お姉ちゃんに会ってくれませんか?実はお姉ちゃん…』
その後の言葉を聞き、ようやく理解した。
美波は「白血病」だ。
俺はすぐに美波の妹に教えてもらった病院に行った。
俺が病室を開けると、美波はびっくりしたような顔をして、俺のことをじっと見ていた。
「美波…!」
「あなた…?なんでここに…」
美波がそう言った。でも、俺はそんな美波の言葉を無視して話し続けた。
「なんで…なんで、俺に何も言わなかったんだよ!!」
俺がそう叫ぶと、美波は泣きながら言った。
「心配かけたくなかったの。あなたのこと、この世で一番大好きだから。…お医者さんによると、そろそろ…限界みたい。ねぇ、あなたは来世でも、私と付き合って、結婚してくれる?」
俺は美波の言葉を聞いて、自然と涙がボロボロとこぼれ落ちてきた。
「……っ!うん…絶対に…」
俺はそう言って、美波の手を握った。
「ありがとう」
そう言い残し、美波は息を引き取った。
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