ラブリー・ガール!

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 ***  翌日。  相変わらず、冬華は俺を避けまくっている。それでも同じクラスなんだから教室は一緒だし、朝の会前にどこかに行くのも限界がある。俺は彼女が教室から出て行こうとするのを先回りして封じると、おい!といつもより強い声で話しかけた。  冬華と話したい。その一心で、既に教室にいる他のクラスメートたちのことはすっぽ抜けていた。 「お前、何で最近ずっとスカートで女言葉なんだよ!お前、本当にそういうのが好きになったのか?」 「……お前には」 「関係なくねーからな!俺は、いつものお前の方がいいと思ってるし、お前もそうなんじゃねーのかよ!」  言った後で、結構恥ずかしい言い回しになっていると気づいた。気づいたが、あえて無視することにする。そんなことより、今の俺には大事なことがあったからだ。 「みんな心配してるぞ、お前がお前の好きな服とか言葉遣いをできなくなってるって。本当は、前みたいな男っぽい服装の方が好きなんじゃないかって。だったらお前もそうしろよ、でもって俺ともっと喧嘩しろ!お前が元気ないと俺はつまんねーんだよ!」  俺が一息でそう言うと、なんだよ、と彼女はそっぽ向いて告げたのだった。 「いつも、アタシのこと……オトコオンナって馬鹿にするくせに。お前は、女の子らしい子、のが好きなんだろ。だから……」 「お、オトコオンナって呼ぶのは!そ、そうしたらお前と喧嘩できるからだろ!お前が嫌ならもう呼ばねえよ、そのかわりこれからも俺と喧嘩はしろ、いいな!?」 「……なにそれ」 「お、俺も何言ってるかよくわかってねーんだよばーか!とにかくだな、俺はお前が元気ないのが嫌だし、お前と喧嘩したりして遊べないのが嫌なんだ!」  つまり、それはきっと。 「いつものお前が好きなんだよ、だから俺の言う通りにしろよ、命令だからな!!」  横暴な言い方を選んだのは、これで彼女が怒ってくれればいいと思ったからだ。他意はない。一応そのつもりである、でも。 「……なんだよ」  俯いた彼女は、泣きそうな顔でぽつりと言った。 「なんだよ、クラスのみんなもお前も。……おばさんは、アタシがズボンばっか履いてるのを見て女らしくない、おしとやかにしなさいって言ったのに……そりゃ、アタシだって、本当は」 「人がなんて言ったって関係ないだろ。それに、お前のママとパパだって、いつもお前に好きな服装許してたじゃん。本当は、お前がのびのびしてた方が嬉しいんじゃねえの?」 「……そうかなあ」  彼女が急に女らしい服装をしてきた理由が、まさに兄貴が言った通りだとわかるまであと五分。  上目使いで見上げた彼女の顔が、ちょっと可愛いと俺が思ってしまうまであと三十秒。 「……ありがと、光」  らしくもない彼女のお礼と共に。  彼女の頬が、ピンク色に染まっていることに気づくまで、あと八秒だった。
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