誰もいない

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誰もいない

来ない人を待つ辛さは自分が一番知っている・・・・・だから・・・・・そんな思いはもう二度としたくない、そう思って生きてきた。 まだ何もわからない小さな子供だったけど、あの日の事は何故か鮮明に覚えていた。 自分の頭に手を置いて「ここで待ってなさい」・・・・そう言われた、じっとその場所で待っていた。 大勢の人が行き交う夜の繁華街、寒さに震えながら、ずっと待った。 もう少ししたら・・・・・もう少し待てば・・・・・きっと来る。 そして温かく抱きしめて「遅くなってごめんね」そう言ってくれる。 そう信じてた・・・・・ どれくらい経ったかわからない、だれか知らない人が来て手を繋いでくれた。 その日からずっとチャペルのある場所でみんなと一緒に暮らした、それでも待った。 「ここで待ってなさい」と言われた言葉を信じてたのに、あの場所から離れた自分のせいだと思ってた。 そうではなかったのだと気が付いてからは、もう待つのも信じることもしなくなった。 待っていても来ない・・・・・信じていてもダメなんだと分かったから・・・・・・。 だから誰にも拘わらないようにしてきた、怒ることも笑うことも泣くこともなかった。 このままでいいと思っていた、このままずっと誰とも関わらずに生きていくつもりだった・・・・・・
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