月のように

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月のように

カメラの前でレンズの向こう側にいる人を想像する、知らない人たちが自分を見る。 いつもそうだった、何処へ行っても誰かに見られていた。 知らない人の視線・・・・・薄ら笑いを浮かべた気持ちの悪い顔で見られる恐怖・・・・ 嫌だ・・・可愛いと言われることも顔を触られることも頭を撫でられることも・・・・・触らないでほしと思った。 誰かの視線が煩わしくて下を向いて、なるべく視線を合わせないようにしてきた。 それでもクラスの男女は興味を持って近寄ってきた、無口なのは話したくないからなのに、それがむしろ魅力的だと言われ、だれとも付き合わないのは他人と一緒にいたくないからなのに、それすらも好意的に見られてしまう。 つくづく人間は勝手だと思う、人の気持ちなどお構いなしに推測で物を言う。 今日も無事仕事が終わった 挨拶をしてスタジオを出る、陽が沈み辺りはすでに暗くなっていた、暗い夜の街が好きだ。 誰にも見られなくて済む、空に浮かぶ月だけが何も言わずにただ見ていてくれる。 綺麗で冷たい月、自分もそうありたいと思う・・・・・誰にも干渉されず世間を見下ろす月。 形を変え明るさを変え好きな時に好きなようにただそこに居ればいい・・・・・何千年もただそこに存在する月。 夜の闇で地上を照らす唯一の灯りになって存在する。
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