やっと逢えたのに・・・

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やっと逢えたのに・・・

電車を降りて公園へ向かう心臓の鼓動が聞こえてきそうなくらい大きくなっていく・・・・・ 誰もいない公園、ベンチに座って月を見る。 ベンチの後ろには大きな桜の木があった、この前は気が付かなかったけど桜の花が咲いていた。 満開はもう過ぎてしまって地面には花びらが張り付いていた、雨が続いて散ってしまったのだろう。 桜の花に気持ちを向けたことも始めてだった、桜の花がこんなに綺麗なんだと始めて思った・・・・・月とよく似合う。 桜の花に夢中になっていたのか、彼がすぐそばにいる事に気が付かなかった。 「こんばんわ、また逢えたね」 「はい」 「月も桜も綺麗」 「はい」 「君もとてもきれい・・・・・月よりも桜よりも」 「・・・・・・」 「隣に座っていい?」 「はい」 「雨が続いて逢えなかったね」 「はい」 彼がこの前と同じように話をしてくれることが嬉しくて「はい」としか言えない・・・・・・もっと何か話したいと思っても言葉が出てこなかった。 胸の鼓動だけが激しい・・・・・・ その時一陣の風が吹いて散りかけの桜の花びらを舞い上げた、風に舞う桜の花びら・・・・・✿ 髪に落ちた桜の花びらを彼が取ってくれた・・・・・手を延ばして髪に触れる彼の指。 そのまま彼の手が頬に触れた・・・・・目を閉じて少し冷たい手に意識が集中する。 その瞬間唇に柔らかで温かなものがそっと触れた‥‥…心臓がギュッとなる・・・・・・そして閉じた目から一筋の涙が頬を伝って落ちた。 「冷えてきたから帰ろうか?」 「はい」 彼はベンチから立ち上がると「またね」そう言って背を向けて歩いていった。 声をかけることも追いかけることもしてはいけない・・・・・・立ち上がって彼とは反対の方へ歩きだした。 涙が溢れて止まらない・・・・・・きっとあれはお別れのキスだったんだ。 もう二度と逢えない・・・・・・
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