イントロダクション

2/12
28人が本棚に入れています
本棚に追加
/123ページ
 一番古い記憶は、笑いながら俺の頭を撫でるすごく大きい手のひら。    俺と姉を二人いっぺんに自分の膝に乗せ、抱きしめてくれた温かい大きな腕。    太くて低くて、でも優しい声で俺の名前を呼ぶその人。    「省吾」    俺はその人が大好きで大好きで…    いつも姉とその膝を取り合いしていた記憶がある。    当時、自分に父親らしい人の存在を知らなかった俺は、何となくこの人が自分の父親なのではないかとずっと思っていた。      ――本当にそうならいいなと、ずっと思っていた。      
/123ページ

最初のコメントを投稿しよう!