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『真さん見つけたぞ!!影虎のダンプだ!!』
突然無線から影虎さん発見の報告が入る。
無線機を囲んでいた人たちが、わっと歓声を上げた。
「ゲンさんどんな状況だ?!影虎は無事か!?」
父ちゃんがキャリアに向かって叫ぶ。
『わからん、陥没した穴にダンプの頭からはまっちまってる!!今、確認してくる。無線で誰か呼んでくれ!!』
「了解!おい今の聞こえたか?近くに居るヤツ、旧道入ってすぐの左手側の細道だ。ジャンボは無理だからレジャーで行ってくれ!!」
『了解!すぐ行く』
『了解』
『行きます!』
何人かの返事があって、またしばらく窓口が沈黙する。
「見つかったみたいだな、無事だといいけど」
西風兄ちゃんの言葉通り、同じ思いの人たちが固唾を呑んで無線機を見つめている。
もちろん、うちの父ちゃんも。
長い沈黙が重苦しい。
『おーい影虎は無事だぞ!!みんなでキャビンから引っ張り出した!!怪我はしてるけど返事はしてる。これから俺の車で病院まで運ぶから』
さっきよりも大きな歓声が店の中に巻き起こった。
父ちゃんが大きなため息をつきイスに座り込んだ。
後で聞いた話だけど、影虎さんは山の中に逃げたのはいいけど既にパトカーに追われていて。
逃げる為にずっと昔に覚えのあったあの道路に逃げ込んで、ろくに整備もしていない陥没部分に思い切りはまりこんでしまったらしい。
そのショックでキャビンに頭を打って意識が朦朧として、無線で助けを求めようとした辺りまでは覚えていたらしいけど。
季節が季節だから、今夜中に発見できなかったら本当に危なかった。
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