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所が、そんな俺の理屈では通じない出来事が起こってしまった。
――静流が、妊娠したのだ。
俺にとっては最高に幸せな出来事。でも、静流の父親にとっては最悪な出来事で…
もともと避妊を一切してないで静流を抱いていた俺。
当たり前といえば当たり前、むしろ遅かったくらいで。
けど、静流の父親の怒りは本当に半端ではないものだった。
「娘はお前などにやらない。子供も始末させる」
静流の妊娠を知り、結婚を許してもらう為に訪れた静流の家で俺は静流の父親にいきなり殴りつけられた。
「私は筋の通らない事は嫌いだ。物事には道理というものがあるだろう。結婚の許可が出ないからと言って、子供さえ作ってしまえばこっちの物だというお前達のその考えは絶対に許さない。とっとと帰れ、二度と娘に近づくな。そうでなければ、お前をこの場で殺す」
そういって日本刀を俺の首元に突きつけた静流の父。
大事な娘を傷物にされた父親の心境としては本当にしごく当たり前のものだったが、俺はそこで静流の父親に殺されるわけには行かなかった。
俺を殺せば静流の父親は殺人犯、俺の子供は父無し子だ。
泣き叫ぶ静流の声に押され、とりあえずそこを立ち去るしかなかった俺。
一旦家に戻り、どうやって静流をあの家から連れ出すかということばかり考えている時、親父が帰ってきた。
「何だお前、死にそうな顔しやがって」
「親父」
俺は親父に、そこに到るまでの事情を全てありのままに話した。
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