2.護られた命

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 全てを話し終えた時、目の前の親父はかなり厳しい顔をしていた。   「わかってるのかお前、自分がやらかした事の意味が」 「……」 「お前が静流を愛してるのは知ってるよ。それこそ本当に中坊の頃から。だからこそお前は静流を幸せにする為に、色々将来の事をちゃんと考えてやって来たんだろう。だから、時間が掛かっても静流の親父さんを納得させる為に、色々がんばってるんだと思っていたんだが…それをいきなり、静流が妊娠した、俺の子供だから結婚認めてくれってなんだそりゃ。静流の父親にしてみりゃ、面白いわけないだろう。筋が通らねぇって言われても仕方ないわな。ちっとは自分の立場を考えろ」 「親父も静流の父親みたいに俺の子供を殺せっていうのか」    ついさっき、静流の父親に殴られた時に言われた言葉が、頭の中をぐるぐると回る。   『娘はお前などにやらない。子供も始末させる』   「親父も俺の子供殺せっていうのかよ…!!俺と静流の大事な赤ん坊…!」 「誰もそんな事言ってないだろ、反省してるのか聞いてんだ。あのな省吾、静流の腹ん中の赤ん坊は俺にも大事な初孫だから。黙って殺させる訳に行かねえだろう」     え…親父…?   「半人前の息子のしでかした不始末だから、親の俺が何とかするのは当然だろ…ほら省吾、静流の家に行くぞ」 「親父」 「まさかこんな事で俺が他人様に頭を下げる事になるとはなぁ…紗織が笑ってるぜ。お前の事、散々甲斐性無しってからかった罰だって」 「……」 「俺に念願の初孫を見せてくれようって息子の為だ、土下座でも何でもしてやるよ。ほら、行くぞ」    拍子抜けするような程優しい笑顔で、親父は俺の頭に手を置いて、子供の頃のように髪をクシャっとさせた。    
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