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「まず最初に申し上げておきますが、私は静流と息子さんとの結婚を許すつもりなどありません。私は筋の通らない事が大嫌いでしてね。うちの静流とお宅の息子さんがずっと付き合っていたのは知っていましたが、そういう付き合い方はしてないという息子さんの言葉に私は裏切られた訳だ。腹の子は堕ろさせます」
また同じ言葉を聞かされた。
俺と静流の大事な子供を殺そうとする残酷な言葉。
「乃条さん。それで静流ちゃんは納得しているんですか?」
親父…
「何をバカな事を、こんな子供にそんな判断がつく訳がありません。静流はまだ子供で…」
「納得なんてしてません!!」
少し離れた所で事の成り行きを泣き顔で見守っていた静流が叫んだ。
「お父さんが勝手に言っているだけです!!私は絶対にこの子を守ります!!絶対にお父さんに殺させない!!私の赤ちゃんよ、私と省吾の大事な赤ちゃん…!!」
「静流っ!!」
立ち上がり、静流の前に行く父親。俺はとっさに立ち上がりその前に立ちはだかった。
父親の平手打ちが飛んでくる。それを受けバランスを崩し倒れた。
「省吾!!」
倒れた俺に静流がしがみつく
良かった静流が殴られないで。静流と腹の子供に何かあったら本当に大変だ。
「省吾大丈夫…!?省吾…!!」
「全然」
泣いている静流の頭を胸に抱え込んだまま、俺は立ち上がった。
怒りに震えている静流の父親と目が合う。
絶対に眼を逸らしてはいけない。眼を逸らしたらこの腕の中の静流をこの父親に奪われてしまう。
生まれて初めて体験する、大人の男との対峙だった。
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