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ある時こつ然と、真治おじちゃんが俺たち親子の前に全く姿を見せなくなった時期があった。
「おじちゃんに会いたいよ」
俺のわがままな願いに、母が困ったような顔をしている。
真治おじちゃんは今、神戸という所でお仕事をしていると母が教えてくれた。
そこはすごく遠い所なのかな。
真治おじちゃんがいないと、母はずっと寂しそうだった。
「省ちゃんのお誕生日頃には帰ってきてくれるかな」
いい子にしていれば、きっと真治おじちゃんが又来てくれる。
その母の話を、小さい俺は本当に信じきっていた。
「おじちゃんが帰ってきたらねぇ、また海に連れて行ってもらうんだ」
「省ちゃんはかたぐるましてもらう!」
「え~だめだよ、おじちゃんはあたしと手をつないでお散歩するの!」
「違うよ省ちゃんとかたぐるまでお散歩だよぉ!」
姉と競い合って、話の中で真治おじちゃんを取り合う。
そんな俺たちを見る母の目は、本当に嬉しそうだった。
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