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「ほら、親父いくぞ」
俺は先に立って歩き出した。
ナースステーションの隣にある新生児室の面会室に入り、大きなガラス窓越しに我が子を見る。
一番手前、左側のベビーベッド。ものすごく可愛い赤ん坊が眠っていた。
木沙ベビー・2820g・女児
目鼻立ちのはっきりとした俺の娘だ。俺は静流によく似た可愛い娘でほっとしていた。
少し早産でちょっと小さいが、殆ど問題が無いくらい元気だ。
「これがお前らの子供か…?」
「うん、親父の初孫だ」
ガラスにくっつかるように赤ん坊に見入る親父。その眼に涙が光っていた。
「名前、決まってるんだよ。親父の名前、真治から一文字もらって【真琴】っていうんだ。可愛いだろ?」
親父がびっくりしたように俺を見た。
「バカ、そんな名前付けたら静流の親父さんに申し訳ないだろうが!!俺の名前からなんて…!!」
「静流が決めたから。俺には何も言えないよ」
「決めたからって…!」
親父はまた振り返って赤ん坊を見詰めてる。
本当は嬉しいくせに親父。
自分の名前をもらった初孫が、可愛くて仕方ないくせに。
「木沙…真琴…」
親父は噛み締めるように、俺の娘の名をつぶやいた。
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