3.霹 靂

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 居間に置かれたゆりかごに真琴がいる。  ゆっくりと揺れるゆりかごがお気に入りで、ずっと大人しくしていた。   「今は便利な物が有るんだな。電動で動くゆりかごか」  親父が感心している。これはなんと美咲が送ってくれたものだ。仕事が忙しいだろうにわざわざ探して送ってくれたのだろう。 「なんか気持ちよさそうねマコ、おねむかな?」  静流がタオルケットを掛けなおす。ゆりかごの真琴が静流を見て笑った。 「あ、マコ笑ったわ。お父さん見た?」 「ああ、見た!」  親父もすごく嬉しそう。 「マコ~早くじぃじと遊ぼうな、いっぱいいっぱい遊ぼうな」  親父が真琴の頬をそのごつい指先でつつく。真琴がまた笑った。多分、本当に笑ってる訳じゃなくて反射の一種なんだろうけど…親父はもうその笑顔にメロメロだ。可愛くて仕方ない様子は誰の目にも明らかだ。    でも親父って、まだ45才なんだよな。下手すると親子位に見えるかも…    俺は親父が俺を育てる為に結婚しなかったのを知ってる。  何度か知り合いとかいう人が親父にそういう話を持って来たけれど、そのいずれも子供だった俺を施設に預ける前提だったので親父は怒ってその人を追い返した。   『俺の息子を何だと思ってるんだ!!』    そう怒鳴って泣きそうな俺を抱き上げてくれた親父を、俺はずっと忘れていない。  トラック乗りの仲間にもとても綺麗な女性がいて、その人も親父が好きな事はわかったけど付き合ったりはしていなかった。
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