3.霹 靂

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「孫もいる立派なじいちゃんだよ。じゃあ行ってくる。今日は大阪と神戸の混載だ、帰り荷あるから帰りはあさってな」  親父は真琴の頬をちょんとつついて立ち上がった。  そのまま玄関先へと向かう。    ――その時唐突に、何か嫌な予感めいたものが俺の胸の内に走る。   「親父、ちょっ…!」  立ち上がろとして自分の指を真琴が握ったままなのに気がついた。  ダメだ、行けない。    玄関のドアを開ける音、続いてガレージのシャッターが開く音がした。    自分の中の胸騒ぎが段々とひどくなる。 「マコ、ごめん!」  俺は真琴を置いて裸足のまま玄関から飛び出した。     一歩遅く、発進した親父のパジェロのテールランプが角を左折するのがかろうじて見えた。 「親父…」  家の中から置き去りにされた真琴の泣く声が聞こえる。 「パパ?どうしたの?」  2階で洗濯物を片付けていた静流が慌てて降りて来た。  玄関先で裸足のままでいる俺を見て驚いている。 「パパ!?」 「ああ、何でもない」    俺にも説明がつかない。どう説明していいのか分からない。  大丈夫。  きっと何でもないから。  
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