イントロダクション

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 その姿は、頭から血しぶきを浴びて本当に真っ赤で…    俺と姉を見るその眼は、俺が知っている優しい母の眼ではなかった。   「省吾、里穂…ごめんねぇ…」    母が笑っていた。  血まみれの、正気を失った眼で。   「あんな人、お前たちのお父さんじゃないから…いなくなってもらったからね。ごめんね二人共、あんな男の血がお前たちに流れているなんてとても可哀想…だからね、お母さんと一緒に天国に行こう。3人だけで静かに暮らそう」  そう言って悲しそうに笑いながら、母は俺たち姉弟に血にまみれた銀色の刃物をかざす。    その恐ろしい色で光る包丁の色は、母の顔をすっかり忘れてしまった今でも脳裏の片隅に焼きついている。
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