美しい狂気の残像

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美しい狂気の残像

『待ってくれ!!!』 机に突っ伏した体をガバッと起こした俺は またあの夢をみた事に苦笑する。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 『気にすんな』 高くもない低くもない声で、妖艶に笑い冷たい笑みを浮かべながらそう言い残した人物は 返り血を浴びて両腕を警察に押されられ、 パトカーで連れていかれる。 反抗期を迎えていた俺は、夜の繁華街に繰り出し、 数人の輩に絡まれやられそうになった。 そんな時現れた男か女かもわからないそいつは、 意図も簡単に華麗に数人相手に倒していく。 なぜ男か女かわからないって? なぜなら 喧嘩するには華奢で儚く、 長い前髪の隙間から見える冷たい瞳は 息が止まるほど美しく、相手の流す血を浴びながら、 その冷たい目とは真逆に妖艶に薄く笑う唇。 男と言える強さと女とも言える美しさだったんだ。 腰を抜かした俺はただただ、その人物を乗せた 走り去るパトカーを見送るしかなかった。 俺は『あの時』から無力な自分が情けなくて、 変わろうと努力した。 ーーコンコンーー ??『失礼します、坊っちゃん』 『おいおい、神崎。坊っちゃんはやめろ。  それに、敬語だって二人の時は無しだ』 神崎『あぁすまん。どうしても癖でな』 神崎は俺の高校生の頃からの執事で今は秘書。 とは言っても年は近く5つ上の30才だ。 コーヒーをデスクの上に置きながら、見透かした様に 『またか?』 クックッと笑いながら自分もカップをとりソファーに 座る。 俺が何に囚われているか知ってる神崎は、 笑いながらいたずらに見る。 秘書とは言え年頃からいる一緒にいる神崎の前では、 社長の顔もいらない。 『うるせぇ』 そう言いながら俺はコーヒーに口をつけごまかす。 神崎『それはそうと、葵。ボディーガードの件だが… 葵『ボディーガードなんていらねぇよ』 神崎『いやいや、会長の言いつけだしな、それに、    顔も知られてきてるし、そうは行かねぇ。    会長が用意した奴が今日来るそうだ』 葵『ちっ。神崎がいればいらねぇじゃねえか』 神崎『今まではな。社長様が優秀で会社が    急成長したんだ。    狙ってくる奴も多くなる。    俺も秘書として忙しくなってるし、    必要だろ?社長様?』 そう言い終わるとどこかに電話をかけながら 部屋から出ていった。
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