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友人を殺して生き残ろうとした者への罰だとでも言うかのように。
――あんな状態でまだ生きてるなんて……惨すぎる。
いっそ、トドメを刺してあげたほうが慈悲なのかとさえ思う。勿論、それが花林に出来るかどうかは別としてだが。
「!?」
そんなことを考えた矢先。突然、死にかけていた真奈美の体に異変が起きた。
「オ」
びくん!とその体が大きく跳ね上がる。そして血走った目が、ぐるんと裏返って白目を剥いた。そして。
「オ、オ、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
獣のような鳥のような、あるいは人間のような。そのどれともつかぬような、奇妙な雄叫びが上がった。
小柄な主婦の首が、腕が、しゅしゅうと煙を上げ始める。さらにはどんどんと黒く変色し始めた。黒い髪がボサボサに伸び始め、灰色に染まり、やがて茫々と生える鬣になる。
全身が黒く染まると同時に、裏返った眼球が再度ぐるんとひっくり返った。そしてその時にはもう、白目のない真っ赤な眼球に変化していたのである。
「あ、あああ、ま、ま、まさか」
疑いようもない、現実。たった今、花村真奈美の体が――使者と同じものに、変化してしまった。彼女が彼女だったとわかる名残はもはや、その身に辛うじて張り付いている彼女の衣服のみだ。
からん、と彼女の両手から握りしめていた包丁が落ちる。剥がされた背中の肉はそのままに、新たに誕生した使者はのっそりと立ち上がったのだった。
「使者に傷をつけられ、それでいてトドメを刺されなかった者もまた……使者になってしまうんだ。どれくらいの傷で使者になるか、その時間はどれほどなのかは個人差がある。が、致命傷に近い傷であるほど早く使者に転じることはわかっている」
悔しげに言う雫。だから彼は先程“トドメを刺してから行け”と苦言を呈していたのだと気がついた。
「ゾンビのようだと思うかもしれないが、正確には違う。傷をつけられることは、細菌やウイルス感染ではない。奴等にマーキングされるようなものだと思ってくれればいい」
「ま、マーキング?」
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