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「……イスラは、いったいどうしてしまったんでしょうか」
「また何かあったのか?」
「はい、実は、……今夜は一人で眠ると言われてしまったんです……」
深刻な顔で告げた私にハウストも「それは本当かっ」と驚愕を隠し切れません。
他の子どものことはよく分かりませんが、これがイスラにとって有り得ないことだとハウストも分かっているのです。
ここ最近ずっとイスラの様子がおかしいことは分かっていました。昼間も話しの途中で私から逃げだしたり、夜もよそよそしい態度を取られてしまいましたから。
しかし今夜はそれだけではありません。ハウストの寝所に来る前にイスラに声をかけた時、「きょうはひとりでねる。だから、ブレイラもひとりでねろ」と言われてしまったのです。
衝撃でした。なにがなんだか分かりませんでした。
だって今までイスラが一人で眠ろうとすることなんてなかったのです。必ず「おやすみ」の口付けを額にして私と同じベッドでないと眠らなかったというのに。
「驚いた。まさかイスラが」
「ですよね。私も驚きました」
イスラは勇者ですが、まだまだ甘えたい盛りの子どもです。
イスラが何か深く悩んでいて、それが私に関することだと分かっているのに、親として何も出来ない自分が情けない。しかも私は原因にさえ辿り着けていないのです。
視線を落として黙りこんでいると私を抱き締めていたハウストが提案してくれます。
「今からイスラのところへ行ってみるか?」
「えっ」
「気になるんだろう。俺も気にならないわけではないからな」
「ハウストっ」
親として、というハウストの思いが籠められた言葉に胸が一杯になりました。私と結婚するということはハウストもイスラの親になるということですから。
「ありがとうございますっ。お願いします!」
そうと決まれば善は急げです。
もしかしたらイスラは寂しくてベッドで一人泣いているかもしれません。
私たちは二人きりの時間を切り上げ、イスラの寝所へ行くことにしたのでした。
急いで湯浴みを済ませたハウストと私は、二人でイスラの寝所に向かっていました。
寝所に近づくにつれて私の緊張が高まっていく。
時々足が竦みそうになって、その度に「大丈夫だ」とハウストに励まされていました。
「イスラは一人で眠っているでしょうか」
「さあ、分からない。一人で眠っていればそれはそれで成長したとも考えられる」
「それは分かっていますが……」
いずれ子どもが一人で眠れるようになるのも分かっています。分かっていますが、イスラは今までそんな様子を見せたこともなかったのに……。
悩む私をハウストが説得します。
「とりあえず部屋を見てみよう。一人で眠っていればそのままでいいし、泣いていれば一緒に眠ってやればいい」
「そ、そうですよね。その通りです……」
ハウストの言葉は納得できるもので自身に言い聞かせるように返事をしました。
一人で眠っていればその成長を喜べばいいのです。少しだけ寂しい気もしますが……。
こうして二人で歩いていると、まだ仕事中だったフェリクトールが前から歩いてきます。
私たちに気付いたフェリクトールがなんとも奇妙な顔になりました。
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