二ノ環・西の大公爵

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「これは見事な眺めです! それにこの城壁も堅固でありながら造形が美しくて迫力がありますね!」 「ブレイラ様に褒めていただけて光栄ですわ! ウフフッ、設計士さんも土木工事に従事した方々も、この都に住んでいる魔族も、みんな喜びます!!」 「そ、それはどうも……」  どうしましょう。疲れます。  童顔で愛らしいジョアンヌは年齢よりも少女チックというだけで、とても良い方のようです。ただちょっと天然で疲れます……。  でも案内された城壁はとても素晴らしいものでした。展望台からは西都を囲む山脈が一望できます。雲より標高の高い場所は雪化粧されていて、まるで絵画のような光景が広がっているのです。  イスラを抱っこして美しい山脈を見せてあげます。 「イスラ、見えますか?」 「うん! おっきい! きれい~、あのしろいの、ゆき?」 「そうですよ。山の上は寒いのです。あの高さだと雪は溶けないのでしょうね」  イスラは瞳をキラキラ輝かせて見学していましたが、次は城壁の下を見て「あっ!」と指差しました。 「おふね、いっぱい!」  城壁の下は運河になっていました。  山脈から湧き出る地下水が大河となり、その大河のお陰で西の領土は豊かな自然に恵まれているのです。西都には巨大な運河が建造されてたくさんの船が行き交っていました。 「ブレイラ様、明日は大瀑布を見学されるとか」 「はい、ハウストと約束していたので楽しみにしているんです。ご子息のランディ様が案内してくれるので助かります」 「この運河を流れる大河の水は大瀑布と繋がっています。この大河の上流にある大瀑布はそれはもう見事なものですよ。きっとブレイラ様もご満足いただけます。ランディにとっておきの場所を案内するように伝えておきますね」 「それは有りがたいです! よろしくお願いします!」  現地の方しか知らないような穴場を教えてくれるのでしょうか。今から楽しみです。  こうして城壁の視察を終えた私たちは、次に王立士官学校へと向かいました。  王立士官学校。  王立士官学校は各領土にそれぞれ建立され、十二歳から二十歳までの少年少女が寄宿舎で共同生活をしながら学んでいます。  この広大な敷地面積の学舎には、貴族の子女だけでなく各地から優秀な子どもたちが集められて未来の士官や高官になるよう教育されていました。いわゆるエリート養成学校ですね。  ここに入学できる生徒は難関とされる入学試験を突破した子どもたちだけで、身分で分け隔てられることはないそうです。  ここを卒業すれば将来を約束されたのも同然で、現在魔界の中枢にいる者たちのほとんどが王立士官学校を卒業しているそうです。ここを卒業することは、軍部のエリートと称される王直属精鋭部隊、魔法部隊、特殊部隊、の三部隊への入隊条件でもありました。 「どの子からも品格を感じますね、なんだか凄いです……」  貴族の子どもたちだけに限定された学校ではないのですが、学舎を行き交う子どもたちのキリッとした面差し。とても賢そうです。  セレモニーで触れあった子どもたちは礼儀正しく、どの子も「ご婚約おめでとうございます」とお祝いしてくれました。……誰が見てもどう考えても事前に教師に仕込まれたものですよね、まあいいですけど。なんだか気を使わせて申し訳ないです。  こうして王立士官学校への視察を終えて次は市場へ向かう事になりました。  しかしその途中、ふと人間界の教会に似た建物を見つけました。敷地内ではイスラくらいの幼い子どもたちが楽しそうに遊んでいます。
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