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「でもハウスト様が魔王になってから、魔界の秩序は甦りました。先ほど視察に行った王立士官学校も以前は貴族の子息しか通うことが許されない学校でした。しかし魔王様はすべての子どもたちに門戸を開いてくださったんです。もちろん試験はありますけど、それは貴族も一緒。魔界のすべての子どもたちに等しい救いのある仕組みを整えてくださいました。この小さな孤児院のような所にも便宜が図られるようになって支援が叶うようになったんです」
「そうでしたかっ……」
この気持ちをなんと表現すれば良いのでしょうか。
誇らしさと愛おしさが込み上げてくる。
私はハウストの一面しか知らないのです。もちろんその一面は私を愛してくれているハウスト。一人の男としてのハウストです。
そして今、語られているハウストは魔界の統治者、魔王としてのハウストでした。
知っているようで知らなかったハウストの統治者としての姿が誇らしい。もっと聞いていたくなります。
嬉しくなって無意識に顔が綻んでしまう私に、ジョアンヌが笑いかけてきました。
「魔王様が妃にとお求めになられたのがブレイラ様のような方で良かったです。心無いことをおっしゃる方もいるかもしれませんが、魔王様と仲睦まじくお過ごしくださいね」
「ありがとうございます!」
心強い言葉に感謝しかありません。
できることならメルディナに聞かせてやりたいくらいですよ。
「ウフフッ、私ども西の者は敬愛する魔王様のご婚約を心から喜んでいますわ。あ、ブレイラ様、どうやら孤児院の方々がお許し下さったそうです。参りましょう」
さっそくとばかりに孤児院に案内されました。
手を繋いでいたイスラは自分と同じ年頃の子どもたちの姿に目を輝かせます。
イスラは同年代の子どもとなかなか接点を持てないこともあって、子ども同士で遊んだことがないのです。いつも森で魔狼と勇者ごっこをしています。
「イスラ、声をかけてみてはどうです。遊んできてもいいですよ?」
「…………で、でも」
イスラが照れ臭そうに私の足にしがみ付きました。
しかしチラチラと子どもたちを見ています。遊んでいる子どもたちに混ざりたいのに勇気が出ないようです。
おかしなものですね。大人相手には太々しい態度をとるのに子ども相手では緊張するようでした。
「仕方ないですね。最初だけですよ?」
苦笑するとイスラの手を引き、遊んでいる子どもたちに近づきました。
イスラは相変わらず私の足にしがみ付いたままですが子どもたちの遊びを興味津々で見ています。
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