一ノ環・婚礼を控えて

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 その夜。  私はハウストの寝所で彼と二人きりでした。  一糸纏わぬ姿でベッドにうつ伏せで組み敷かれ、体の線をハウストの手がゆっくりとなぞる。  くすぐったさに肩を竦めると背後から覆い被さるように抱き締められました。 「ふふ、くすぐったいです」 「くすぐったいだけか?」 「秘密です。あ、ハウスト……」  背後から耳を甘噛みされ、そのままうなじへ口付けが落ちていく。  ハウストはうなじに口付けながら悪戯を仕掛けるように胸の突起を指で転がしてきました。 「ハウスト……っ」  突起を軽く抓まれて甘い痺れが背筋を走りました。  漏れる声は吐息が混じり、鼻にかかったものになっていきます。  背後から抱き締められて肌と肌が隙間もないほど密着しました。  ハウストの温もりと感触が心地良くて私も身を委ねます。 「ハウスト……」 「もう一回できるか?」 「あっ……」  不意にお尻にハウストの硬いものが押し付けられました。  先ほどまで受け入れていた箇所がきゅっと疼く。まだ柔らかいそこは彼の形を覚えているのです。  でも明日から西都へ視察に行かなければなりません。 「今夜、もう何回目だと思っているのですか。明日は視察に行くのに……」 「裸のお前が目の前にいるんだ。勃つのは当然だろう」 「だからって……」  頬が熱くなりました。  大好きな人に口説かれて嬉しくないわけありません。  明日は大事な視察でも、あと一回くらいならと思ってしまう。でも素直に受け入れるのは何だか悔しいです。  困ったように視線を彷徨わせましたが、ちらりと背後のハウストを振り返る。 「……や、優しくしてくれるなら、いいですよ?」  激しくするのはダメです。ハウストをじっと見つめて訴えます。  するとハウストは目尻や頬に口付けてくれました。 「いつも優しく扱っているつもりだが」  そう言いながらハウストは私のお尻の曲線をそっと撫であげる。  ほら優しいだろうといわんばかりに羽のように触れられ、じんっとお腹の奥が熱くなりました。 「こちらの方が素直なようだ」  反応してしまう体にハウストが喉奥で笑います。  まるで彼の手の平の上のような状況。……少し面白くないです。 「……そうは言いますけど、あなた、私のお尻ぶったことありますよね?」 「…………」  ハウストの手がぴたりっと止まりました。  彼を振り返って目が合うと、なんとも複雑そうな、居心地悪そうな顔で私から目を逸らしてしまう。  私、忘れていません。あれはモルカナ国でのこと。たしかに私もあなたを怒らせるようなことをしましたが、それにしてもあれは如何なものでしょうか。  あの体が甘痒くなる妖しい薬液、挙げ句にお尻が赤くなるまで叩かれて……。もちろん手加減してくれていましたが、そういう問題ではありませんよね。
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