二人はプラトニックラブ?

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二人はプラトニックラブ?

 ストーカーのことなど知る由もないマリとサラは、イブの日を境にさらに仲良くなった。もう親友レベルだ。 「なんか、サラといると落ち着く。」 「え、私はマリといるとテンション上がるよ?」 「上がってんの?」 「うん。心から楽しい。」  そんなやりとりを学校でもするものだから、周りは皆、二人はデキているものだと勘違いした。 「ねーねーマリ。  思うんだけど、私達最近、みんなにイベント誘われなくなったと思わない?」 「それ。私もそれ思ってた。  でも除け者って感じはしないよね?」 「うん。  シカトされたことはない。」 「なんで?  どういう状況?」  疑問が一致した二人は、学校終わりにクラスメートに尋ねてみた。 「ねえ!  最近私達、面白いこと逃してない?」  するとクラスメートたちは爆笑した。 「めっちゃラブラブで楽しそうなお二人が、楽しいこと逃してない?だって!」 「意味わかんないねー!」 「もしかして気づかれてないと思った?」 「みんな承知してるよ、二人はデキてるって!」 「「はあ!?」」  サラとマリは慌てた。 「デキてないよ!  なに言ってんの!」 「確かに私とサラは仲いいけど!  デキてるわけじゃない!」 「またまた。」 「人は真実を隠したがる。これ、本当だったね?」 「真実じゃないって!」 「おかしな妄想やめてよ!  サラも私も迷惑!」 「え、マジで?」 「デキてないの?」 「「デキてないよ!」」  ニヤニヤしていたクラスメートたちも、二人の大否定に顔を見合せた。  そのうちの1人が言った。 「あのさ……実は『うちのクラスのラブラブカップル』っていうタイトルで、教室での様子の動画を公開しようって話してたんだけど。」 「はあ?」 「なにそれ!」 「も、もちろん、二人の許可を取らないとね!とも話してたよ!」 「そうそう、肖像権の問題もあるし、隠し撮り映像を勝手に公開なんて、私達のプライドにも関わるしね。」 「それを聞いて安心したわ。」 「え、安心したの? サラ。  動画撮られてたんだよ?」 「あ、それはそうなんだけど。」  黙ったサラの傍らで、マリは考え込んだ。  そして言った。 「その録画、今日限りでやめて。」 「あ、やっぱ気にさわった……よね。」 「ごめん。」  しゅんとしたクラスメートたちに、マリは言った。 「その代わり、今まで録画した分は公開して。」 「え、マジで?」 「いいの?」 「ちょっとちょっとマリ、どういうこと?」  慌てたサラが問い質すと、マリはにっこりした。 「虫よけになるじゃない?  くだらない奴らへの。」 「そ、そうかなあ。」  クラスメートたちは一斉にうなずいた。 「「「「「なるなる!」」」」」  サラは半信半疑だったが、しばらく考えてから承諾した。サラもマリとの間に誰も割って入ってきてほしくなかったからだ。  こうして、体の関係全盛の世間で、サラとマリはまったく逆をいくカップルとして公開された。  クラスメートがつけたキャッチフレーズは、 『愛はほの暖かい』 だった。  くだんのストーカーの露出欲求も人知れずおさまり、公開された動画を楽しむようになって、隠しカメラはオフにされた。  サラとマリはその後堂々と「大好き」と言い合うようになり、相変わらず仲が良く、色恋沙汰が入り込む余地は一切なかったのだった。  それから数年後、サラとマリは一緒に暮らし始めた。二人で養子を育てたいと考えたからだ。  二人は施設を訪問し、より積極的なサラが赤ちゃんを抱っこさせてもらった。  赤ちゃんは知らない大人に驚いたのか、すぐに泣き出したが、マリが優しく歌うと、赤ちゃんはサラの腕の中ですやすやと眠ってしまった。二人はその赤ちゃんを引き取りたいと申し出た。  施設側が提示した条件の1つとして、二人が籍を入れる必要があったが、二人とも自分がいちばん居心地のいい相手と結婚したいと思っていたため、ふたつ返事で籍を入れた。  血の繋がりのまったくない三人を繋ぐものは何か。  その答えになるもの全てが、たぶん愛だろうと、二人は話している。
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