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私の理由
私は今日でここを去ります。今までありがとう。
私があなたの元を離れた理由は、あなたのことがきらいになったからじゃないのよ。それだけは分かってほしいの。
あなたは孤独だった私の世界にぬくもりをくれた。そんな人をきらいになるわけないじゃないの。
私がそばにいることは、あなたにとってよくない。それだけのことなの。
いつもオフィスの隅っこに一人でいて、誰からも見つけてもらえなかった私に、あなたは声をかけてくれた。わからないところがあったら相談してくださいねって。
誰かが私のことを気にかけてくれるなんて思いもしなかったから、私、それだけでとても嬉しかったの。
あなたはその一度だけじゃなく、私に気がついてから毎日何か言ってくれた。まわりの人は、あなたを変な目で見ていたわ。あの不気味な席にいつも近づいているって。だけどあなたは、私のことをずっと気にしてくれた。
でも、あなたがだんだん弱っていくのがわかったの。自分で気づいているでしょう。私があなたの体力と気力を吸い取ってしまっているんだって。
私は大好きなあなたが、ほかならぬ自分のせいで弱っていくのを見ていられないの。
それにもう、十分満足したわ。一時でもあなたと居られてとても嬉しかった。あなたとの思い出があるから寂しくないの。この世に未練なんかないわ。
あちらで会えるといいな、って思うけれど、あなたに悪いことをしてしまった私は、あなたと同じ場所にはきっと行けないわね。
さようなら。残りの人生を元気で過ごしてね。
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