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先生はちらりと、床に落ちた木箱や写真を見る。そして舌打ちした。
「なるほど、最悪パターンか」
そう呟くと、ポケットから何かを取り出した。数珠と、何やら小さなスプレーボトル。どこにでも売っている透明なプラスチック製のものだ。
「上手く行くといいが」
先生は数珠を握りしめると、ボトルのキャップを口で咥えて外した。そして、瞬時に目の前の山中さんに吹きかけた。ぷしゅ、っと、なんだか間抜けな音が響く。
だが、山中さんは分かりやすく顔を歪めて叫んだ。耳を塞ぎたくなるような絶叫だった。そして、液体がかかったであろう部分が、どろりと溶けだしたのだ。ひっと声をあげてしまう。左半分の顔の皮膚が溶けて落ちる。
すかさず先生は、数珠を思いきり投げつけた。さらに叫び声が大きくなる。
「消えろ、生まれ変わるなら一人で逝け」
どろどろと溶け行く身体は煙を上げていた。どこか嫌な匂いが鼻に付き、私は息を止めた。皮膚が腐敗するように落ち続け、それと同時にこぼれたそれは消失していく。
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